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    「――?」

    「もはやお膳も据ゑていたゞきましたし、これで十分頂戴いたしたも同然でありますから、甚だ失礼ながらお先きに御免を蒙ります」

    「さやうさ。当今では大分世智辛せちがらくなりましてな。薬価の代りに畑の物を貰つてすませる位のことはさう珍しくはありませんよ」

    「ふむ。悧巧者だな、お前は」

    「坊は?」

    「それで――?あゝ」

    「どうも御苦労さま、暑いところを」

    練吉が元の座へ帰つてゆくと、房一はぽつんと一人とり残された。来客達の大半とはすでに顔見知りだつたにかゝはらず、今夜の席では房一は唯一の新顔だつた。

    「へえ。――わし達は小倉組の者ですが、ちよつと怪我人ができましたよつて、せんせいに御面倒かけに上つたんですが」

    「さうだね。まさか医者の家に古障子の玄関といふわけにもいくまいね」

    「ふむ、ふむ」

    それは正文にかゝりつけの患家だつた。

    その時やつと、男は少しうなづいた。そして背中に負はれて出て行つた。

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